「セールスイネーブルメントの発祥や歴史的背景を知りたい」
「今までにどのような成功事例・導入効果があったのか知りたい」
本記事では、上記のような関心のある方向けに、以下の内容をご紹介します。
- セールスイネーブルメントが生まれた経緯
- 実際に導入した企業の成功事例
- 具体的な導入効果
どの企業がどのような施策で成果を上げたのか、具体例を交えながら紹介するので、初心者の方でもイメージをもって読み進められます。
セールスイネーブルメントを導入しようか検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
セールスイネーブルメントとは何か
この章では、以下の3つを簡潔に解説します。
- セールスイネーブルメントの概要
- 具体的な取り組み内容
- 使用するビジネスツール
これらの内容を把握しておけば、本記事をスムーズに読み進められるでしょう。
セールスイネーブルメントの事がまだよくわからないという方は、是非ご一読ください。
セールスイネーブルメントの概要
この章では、セールスイネーブルメントの概要と、それを実現するために重要なビジネスツールについて簡潔に説明します。
特に、MA・SFA・CRMの3種類は、営業の効率やパフォーマンスを向上させるうえで不可欠なツールであるため、ぜひ理解しておきましょう。
セールスイネーブルメントとは?
セールスイネーブルメントとは、営業力向上を目的とした取り組みのことです。
たとえば、以下のような施策を行います。
- 営業担当者へのトレーニング:有効な営業手法を共有し、チーム全体の営業力を強化
- ビジネスツールの導入:営業データを一元管理し、業務効率化と成績向上を実現
- 顧客分析:顧客の過去の行動からニーズを分析
このように、営業活動の全面的な強化に取り組む点が特徴と言えます。
そして「セールスイネーブルメント」という概念は、2010年以降アメリカを中心に急速に広がりました。ビジネスツールの発展、インターネットの普及、購買行動の変化がその背景にあります(この点については、後の章で詳しく解説します)。
セールスイネーブルメントは、こうした変化に対応するための効果的な手法として注目されるようになったのです。
どのようなビジネスツールを使うのか?
セールスイネーブルメントで使われるビジネスツールは、主に以下の3つです。
MA(マーケティングオートメーション) | 見込み顧客を発掘するツール。 |
SFA(営業支援システム) | 顧客情報や商談進捗を管理し、営業力を向上させるツール |
CRM(顧客関係管理) | 既存顧客との関係を管理し、リピート率や顧客単価向上を目的とするツール |
これらのツールを活用して営業活動の一部をシステム化することで、業務効率の向上を図ります。
たとえば、MAツールと自社ウェブサイトを連携して会員にメルマガを配信し、メールの開封率や閲覧ページから購買意欲を分析します。そして、購買意欲の高い顧客を営業部に引き渡すことで、営業担当者は効率的なアプローチが可能です。
セールスイネーブルメントでは、このようにビジネスツールを活用し営業力の向上を目指します。
セールスイネーブルメントの特徴
この章では、セールスイネーブルメントの主な取り組みである、以下の3つを解説します。
- 営業活動全体の最適化
- 営業チームへのトレーニング
- データに基づく営業戦略
具体的な取り組み内容がわかれば、セールスイネーブルメントのイメージが掴みやすくなるでしょう。
営業活動全体の最適化
セールスイネーブルメントは、見込み顧客の発見から契約終了後に至るまでの全営業活動の最適化を目標とした取り組みです。
たとえば、ビジネスツールを活用して、営業担当者の行動を記録し、問題点や有効な手法を見つけ出すといったことをします。
このように業務プロセス全体を可視化して、ボトルネックを改善したり、ノウハウを共有することによって営業活動を最適化していきます。
そのため、セールスイネーブルメントにとって、ビジネスツールの導入は欠かせないと言えるでしょう。
営業チームへのトレーニング
セールスイネーブルメントでは、新人のみならず営業チーム全体への研修を定期的に行います。
なぜなら、できる限り営業手法を統一し、個人差による営業成績のバラツキを抑えて、安定的な成果を出すためです。
こうすることで、優秀な営業担当者に頼りがちになってしまう「属人化」という状態を避けることができます。
具体的には、優秀な営業担当者の手法をマニュアル化し、他のメンバーと共有することで、チーム全体のパフォーマンスを底上げします。
このように、トレーニングを通じてメンバー間の実力差を埋めることも、セールスイネーブルメントの重要な取り組みの一つです。
データに基づく営業戦略
セールスイネーブルメントでは、主にビジネスツールなどで収集したデータを活用して、効果的な営業戦略を立てます。
例えば、顧客の過去の行動から購買意欲を数値化し、一定のスコアに達したら営業部に顧客を引き渡すといったことです。
具体的には、顧客が資料請求したら+3ポイント、ウェブページを閲覧したら+1ポイントのように購買意欲を数値化します。
この施策のことをスコアリングといい、自社ウェブサイトとビジネスツールを連携させて実施するのが一般的なやり方です。
スコアリング機能は、主にMAツールに標準搭載されており、これを活用することで、購買意欲の高い顧客を発掘できます。
このように、データに基づいた戦略はセールスイネーブルメントの重要な柱となっています。
セールスイネーブルメントの発祥と歴史
セールスイネーブルメントは、どのような背景から生まれたのでしょうか?
その歴史を紐解くことで、営業活動を効率化し成果を上げるための新たな視点が得られるかもしれません。
ビジネスの最前線を走り続けるアメリカが切り開いてきた、営業最適化への道筋を見ていきましょう。
<h3>セールスイネーブルメントの登場
セールスイネーブルメントという言葉は、1998年頃に「salesenablement.com」という、営業情報の交換サイトが作られた際に登場しました。
その直後、1999年にはJohn Aiello氏とDrew Larsen氏が、営業活動における以下の3つの課題を指摘しました。
- 差別化やバリューメッセージの欠如
- 曖昧で非効率なセールスプロセス
- 顧客やソリューションに関する情報不足
この二人は、セールスイネーブルメントの先駆者として知られ、営業活動の改善や最適化に大きく貢献しています。
彼らは、これらの課題を解決するために「営業活動の効率化」や「顧客の変化に合わせた販売戦略の重要性」を強調しました。この考え方が、現在のセールスイネーブルメントの基盤を成していると言われています。
テクノロジーの進化により台頭
2010年頃にモバイルデバイスが普及し、インターネット利用者が増え、セールスイネーブルメントは大きな進化を遂げました。
通販サイト・ネット広告・メルマガ・顧客管理などをシステムで自動化することにより、営業活動を効率化できるようになったからです。
たとえば、通販サイトでの購入履歴から顧客のニーズを分析し、適切な広告やメルマガを配信するといったことが可能になりました。
さらに、蓄積されたデータを活用することで、顧客の行動や購買意欲を正確に把握し、営業戦略の精度を高めることもできます。
このようにテクノロジーの進化によって、セールスイネーブルメントの目的である、営業活動の最適化は実現しやすくなりました。
アメリカ企業を中心に普及
アメリカでは2010年頃からセールスイネーブルメントが普及し、2018年には61%の企業が取り組んでいるとの報告があります(参考元:CSO Insights Report 2018)。
広大な国土を持つアメリカでは、営業担当者が各地を訪問したり、社員全員にトレーニングを施したりするのが容易ではありません。
そのため、インターネットを活用したセールス展開や、営業手法の共有を可能にするセールスイネーブルメントの重要性が高まりました。
この点にいち早く気づいたIBMやSalesforceなどの大手企業が、CRMやSFAなどのビジネスツールを率先して開発し、これが営業活動の効率化を加速させました。
このような背景から、アメリカではセールスイネーブルメントの普及が一層進んだというわけです。
セールスイネーブルメントの現状
セールスイネーブルメントはアメリカを中心に普及し、やがて世界中に広がりました。
そこで本項目では、セールスイネーブルメントの市場規模や日本での普及状況を紹介します。
多くの企業が注目しており、今後の競争において欠かせない要素になりつつあります。
セールスイネーブルメントの市場規模
セールスイネーブルメントの市場規模は、2023年時点で約5千億円と推測され、2030年には約1兆7千億円に達すると予測されています(参考元:Markets and Markets)。
この成長は、ビジネスツールを活用した営業活動の普及が背景にあり、セールスイネーブルメントが今後も急速に発展する可能性を示しています。
さらに、アメリカの調査によると、セールスイネーブルメントに取り組む企業の割合は2013年の約20%から2018年には約60%へと大幅に増加しました(参考元:CSO Insight’t))。
このデータから、企業の関心が短期間で急速に高まっていることがわかります。
実際に、成功事例や導入効果に関する報告が増えており、セールスイネーブルメントのさらなる発展が期待できます。
日本企業にも普及
日本におけるセールスイネーブルメントの市場規模は、2019年には13億円でしたが、2024年には135億円に拡大すると予測されています(参考元:ITR)。
この予測から、日本でもセールスイネーブルメントの需要が急速に高まり、普及が進んでいることがわかります。
さらに、従業員500名以上の日本企業の営業担当者500名を対象に行われた調査(2023年)によると、55%の企業が「セールスイネーブルメント」に取り組んでいることがわかりました(参考元:PR TIMES)。
一方で、同調査では「効果を実感している」と答えた企業は全体の15%にとどまっています。
この背景には、セールスイネーブルメントが効力を発揮するには十分なデータを集める必要があるという特性があります。
そのため、導入から効果を実感するまでには時間がかかることを理解し、長期的な視点で取り組むことが重要です。
日本製ビジネスツールも多数発売
日本製のビジネスツールも多数発売されており、日本においてもセールスイネーブルメントの需要が高まっていることがわかります。
たとえば、カイロス3・eセールスマネージャー・キントーンなどが純国産ツールとして有名です。
純国産ツールは、資料とサポートが日本語に対応しているため、導入時のハードルが低いというメリットがあります。
特に「カイロス3」では、導入時に専属の担当者が付き、使用法の指導だけでなく施策の実施まで面倒をみてくれる手厚いサポートが特徴です。
「eセールスマネージャー」は営業プロセス管理に特化し、「キントーン」は柔軟なカスタマイズが可能で多様な業務に対応できる点が評価されています。
このように現在は、日本企業のニーズに適したツールが増えたことで、セールスイネーブルメントの導入をしやすい環境が整ってきています。
セールスイネーブルメントの成功事例
この項目では、セールスイネーブルメントを導入し、成果を上げた3つの企業事例を紹介します。
いずれの企業もビジネスツールを駆使しており、業務効率化や売上向上につなげています。
これらの事例を通じて、セールスイネーブルメントがどのような効果を発揮するのかを見ていきましょう。
株式会社ベネッセコーポレーション
ベネッセコーポレーションは複数の事業を展開しており、顧客管理に苦慮していたためMAツールを導入しました。
多数の流入経路から入ってくる顧客の情報を1つのツールに統合したことで、管理や分析が容易になりました。
具体的には、利用サービス別に顧客を分類し、ニーズに合わせたオファーを行うことで、顧客対応の精度が向上しました。
このように、購買履歴や行動データをもとに顧客を分類できるMAツールは、さまざまな顧客を抱える企業にとって非常に有用なツールと言えるでしょう。
参考元:https://blog.hubspot.jp/marketing/marketing-automation-case-studies
NECネクサソリューションズ
5社合併により設立されたNECネクサソリューションズは、営業プロセスが統一されていないという課題を抱えていました。
そこで、営業プロセスを可視化するためにSFA(営業支援)ツールを導入しました。
これにより、商談進捗や担当者の活動状況を一元管理できるようになり、各部門間での情報共有がスムーズに。
さらにツールに搭載されているチェックシート機能を活用することで、訪問時に必要な情報を網羅的に確認できるようになり、取引先への再訪問を減らすことができました。
このように、SFAツールの導入は、営業プロセスの可視化を通じて業務フローを改善し、営業活動の効率化に大きく貢献しています。
参考元:https://www.e-sales.jp/casestudy/necnexs/
ピザハット
ピザの宅配サービスで有名なピザハットは、オンライン会員へのマーケティングにCRMツールを活用しています。
具体的には、メルマガの作成に活用し、労力削減とメール経由での売上向上(一年で115%)に成功しました。
さらに、CRMツールで注文経路を分析したところ、アプリ経由の注文がメールや電話より多かったことが判明。
そこでアプリのプッシュ通知を開始したところ、CV数が1.4倍になり、売上を大きく伸ばしました。
このようにビジネスツールはデータを可視化することができ、新しいビジネスチャンスの発見につながる場合があります。
参考元:https://markezine.jp/article/detail/31900
まとめ
本記事では、セールスイネーブルメントの発祥から現在に至るまでの歴史を解説しました。
セールスイネーブルメントは、営業活動に多くの課題を抱えていたアメリカから発祥し、テクノロジーの発展と共に世界中に普及しました。
現在に至っては市場規模も大きくなり、今後も拡大していくと予測されています。
こうしたなかで、成功事例や導入効果などの情報が報告されるようになり、多くの企業がセールスイネーブルメントに注目しています。
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